再生治療
当院での再生治療(概要)
「再生治療」とは怪我や病気などによって失われてしまった機能を、薬などでは無く、元々持っている人の体の再生する力を利用して元通りに戻す事を目指す医療で誰もが生まれながら持っている「自然治癒力を利用した治療法」です。
PRP療法、PRF療法と呼ばれる治療法で歯槽骨や歯肉の再生促進が行われています。
どちらも患者さん自身の血液を利用するため安全性が高く、歯科再生治療だけではなく整形外科、皮膚科、美容整形等、広い分野で応用されています。
再生治療のプロセス
PRP、PRFなどの血小板濃縮材料は末梢血管に作用し、血管の新生を促す事で末梢血中の幹細胞を動員し、組織や骨を作る細胞の生成を誘導することで傷ついたり失われたりした体の組織の再生を促進させてくれる事が報告されています。
また活性化された血小板は傷口に多数集まり、顆粒内容物を放出して傷口をふさいでくれる働きをします。
当院では症状、ケースによりPRF療法または薬剤併用療法を行っております。
PRF療法:歯のない部分に骨を作る
薬剤併用療法:歯の周りに骨を作る
歯の周りに骨を作る場合、前途の様な方法で歯の周りに骨を作る材料を置いてもなかなか期待する様な結果は得られません。 当院では「リグロス(科研製薬)保険適応治療薬」 や「エムドゲイン(Straumann)保険適応外治療薬」 といった歯周組織再生材料を用いた再生療法を行っています。
PRP、PRF療法は現在のところ保険診療としては認められておらず、自由診療で行われています。 また、自分の血液を使うことから比較的安全性の高い再生治療と言えますが、2014年に施行された再生治療等の安全性確保等に関する法律「再生医療法」で、再生治療を行う実施施設は厚生労働省に届け出が義務付けられています。 当院は厚生労働省届出医療機関(施設番号FC7150239)です。
- PRP
- Platelet-Rich Plasma 多血小板血漿 血液を遠心分離機にかけ通常より3~5倍に濃縮した血小板に化学的操作を行い活性化したもの。
- PRF
- Platelet-Rich Fibrin 多血小板フィブリン 血液を遠心分離機にかけたて濃縮した血小板。フィブリノーゲンと呼ばれる血漿分子を活性化した物。
- 顆粒内容物(α顆粒)
- 複数の成長因子を含んだタンパク質。
- リグロス
- 繊維芽細胞増殖因子(傷を治したり、血管をつくる成長因子)の一つ「FGF-2(bFGF)」を使用した薬。
- FGF-2
- 血管をつくり歯肉に栄養を供給して、歯周病によって失われた歯槽骨(歯を支える骨)や歯周組織の再生を促す繊維芽細胞成長因子。
- エムドゲイン
- エナメルマトリックスタンパク質を使用した材料で、歯周病で失われた歯槽骨を再生させてくれる薬剤で1990年代後半に治療が開始され、これまでに世界で200万人以上に使用されている薬剤。
再生治療のケース
再生治療は大きく以下の4つのケースに分けられます。
- 顎骨の再生(歯と共に失くした骨の再生)
- 歯槽骨の再生 GTR(歯の周りの骨の再生 )
- 根尖部の骨の再生(根尖病巣により消失した骨の再生)
- 抜歯窩の骨の再生(抜歯により生じた骨欠損部の再生)
当院で実際に行ったそれぞれのケースの主訴、医師所見に合わせて処置内容、材料、費用についてご案内します。
顎骨の再生 (歯と共に失くした骨の再生)
抜歯や歯周病により歯を失くすと歯槽骨(歯を支えていた骨)は時間の経過とともに吸収されてしまいます。 歯を支える骨がなくなると骨の中に人工の歯の根を入れるインプラントもできませんし、入れ歯を作ることも難しくなります。 この様なケースの再生治療は、歯茎の部分に人工の骨や薬剤を入れる手術を行い、歯を支える骨を増生させます。
主訴
上顎の奥歯が無く、前歯に義歯を架けて使っていたが、その前歯もグラグラしてきて、もう総入れ歯しか無いといわれてきました。
上顎は骨が無いからインプラントは難しいと言われました。上顎の インプラントは難しいのでしょうか?
医師所見
上顎でも下顎でも、骨が無いところのインプラントは易しくありません。
しかし、充分な検査と材料と、器材を揃えれば可能な場合は多いです。
当ケースでは上顎骨の外側の骨を内部の粘膜を破らない様に剥がし、人工の骨を作る材料を填入します。
その上で外側の骨を戻し顎骨の中に人工の骨を作りました 。
人工骨が石灰化(骨が硬くなる事)するまで5~6ヶ月待ち、その部分にインプラントを埋め込みました 。
インプラントを埋め込んだらこのインプラントがインテグレーション(骨と結合する事)するのを待ってからブリッジを作成しました。
下顎にもインプラントを行い、最終的には入れ歯を使わず、快適に食事を楽しむ事が出来、見た目も美しくなりました。
再生治療の材料・費用
- メタルボンド
- 90,000(1本)×14=1,260,000
※上顎のみ、メタルボンド14本の場合
- サイナスリフト
- 200,000(1箇所)×2(左右)=400,000
- 使用材料
- Β-TCP(オスフィール)
H.A.(アパセラム)
PRP.・ PRF.
保護膜(Bio-Gide)
- インプラント
- 190,000(1本)×8=1,520,000
- 使用材料
- POI-EX
歯槽骨の再生 GTR (歯の周りの骨の再生)
虫歯の放置や歯周病の進行により歯の周りにある骨が溶けたり、吸収されてしまと歯がグラグラして、重症になると歯が抜けてしまいます。 この様なケースの再生治療は歯の周りに特別な薬剤を塗布したり、人工の骨を入れる事で、骨を再生し、グラグラしないしっかりした歯で咬める様にします。
主訴
歯周病で歯の周りの骨が溶けてしまっていると言われましたが溶けてしまった骨を元に戻す事は出来るでしょうか?
医師所見
これらの条件をクリアできた場合に「歯の周りの骨」または「歯が有った部分の骨」の再生が可能となります。 この再生治療が必要となる場合、「歯の周りの骨が溶け、少なくなって、或いは歯の周りが化膿している」というパターンがほとんどで、患者さんの自覚症状としては「歯が痛くて噛めない」、「歯周病が酷い」、「根尖病変と診断された」とうのが多くあります。
当ケースではブラッシングやスケーリングを行ってもなかなか歯茎の腫れが引かず【写真3】、レントゲンを見ると歯の周りの骨が「楔状」に溶けていました 。
この様な場合、歯茎を剥がして歯の表面を綺麗にし、骨を平坦化すれば歯茎の腫れは引きますが、骨の量は少なくなり、歯冠・歯根長比(骨の中に埋まっている部分と、外に出ている部分とのバランス)が悪くなります。
そこで、この吸収した骨の部分に足場として骨の形成を促進してくれるβ-TCPと細胞を増やす成長因子を含んだリグロスを用いて、再生しました。
まずは、歯茎を開き、根面の歯石を取り除いた後、根面を滑沢化します 。
その後、この骨の欠損部に補填剤を填入しリグロスを塗布します 。
この状態で適切なメンテンナンスを行いながら経過観察を行い、6カ月後には歯茎の腫れも引き 、レントゲンでも歯の周りの骨も白く見られます。
再生治療の材料・費用
- 使用材料
-
Β-TCP(オスフィール)
H.A.(アパセラム)
歯周組織再生材(リグロス)
- GBR費用
- 100,000(1/3顎)×1=100,000
※1/3顎とは、顎を前方、右後方、左後方、それぞれ3つに分けた1部分。
根尖部の骨の再生 (根尖病巣により消失した骨の再生)
虫歯や破折などで歯の中の神経を取る治療が上手く行かなかった場合、根尖部(歯の根の先端)に慢性の炎症が起こり膿が溜まった状態になります。
慢性の炎症は時間の経過と共に大きく広がり、周りの歯を支えていた骨は吸収されてしまいます。
この様なケースの再生治療は、先ず、根管治療(歯の中の神経が有った部分の治療)のやり直しを行う事で、炎症状態を取り除きます。
それでも膿が無くならない場合には、手術をして膿の部分を取り除き、骨を作る材料を埋め込み、歯槽骨を再生します。
主訴
「歯の根っ子に膿が溜まって骨が溶けてしまっている」と言われました。この様な場所にインプラントをすることは出来ますか?
医師所見
抜歯をする際、「骨を作る処置」をして抜歯をすれば、骨の幅、高さは回復でき、インプラントをすることも可能になります。
当ケースの場合、 のレントゲンからも分かる通り骨の吸収が大きいためこのまま歯を保存は困難でした。
よって抜歯を行い同時に骨を作る材料を埋めます 。
更に傷の治りを良くするために患者さんの血液から分離、抽出したPRFで傷口を保護し 、加えてCytoPrastという特殊な膜で創面を保護します 。
3~4ヶ月もすると傷口もあまり分からなくなり、再生した骨と元からある骨との違いもほとんど分からなくなりました
ここでインプラントを埋入しました 。
レントゲンで確認するとインプラントが再生された骨にしっかりと埋め込まれているのが確認できます 。
再生治療の材料・費用
- メタルボンド
- 90,000(1本)×3=270,000
- 抜歯窩保存治療
- 30,000(1箇所)
- 使用材料
-
Β-TCP(オスフィール)
PRF
保護膜(CytoPlast)
- インプラント
- 190,000(1本)×3=570,000
- 使用材料
- POI-EX
抜歯窩の骨の再生(抜歯により生じた骨欠損部の再生)
虫歯や歯周病で歯を抜いた所の穴を抜歯窩と言います。抜歯窩は時間の経過と共に自然に塞がります。
しかし、自然に任せておくと抜歯した部分の骨は、通常、薄く小さくなります。高年齢になるほど骨の再生能力は低下します。
そこで当院ではそれを防止するために抜歯窩に骨を作る材料を埋め込む方法で歯槽骨の再生を行っています。
主訴
歯の根っ子を半分取っても、ブリッジの土台として使えるのですか?
医師所見
歯の根っ子が半分でもブリッジの土台として使うことは出来ます。
しかし、適切な処置を行っておかないと、いずれ歯の周りの骨が溶け使えなくなってしまいます。
この様に歯の根っ子を半分に割り、片方だけ抜歯する「ヘミセクション」処置は比較的多くみられますが、やはり根が半分なので歯の周りの骨は大きく吸収されています。
歯を抜歯するときに、骨を作る処置を行います。
割れている部分だけ抜歯し 、抜歯窩を綺麗に掻爬した後、骨を作る材料を埋め込みます。
術後3年経過したレントゲン でも骨の幅が保たれ、外観でも歯茎の高さは保たれています。
再生治療の材料・費用
- メタルボンド
- 80,000(1本)×3=240,000
※メタルボンドでは無く保険の材料で修復する場合はおよそ2万円以内で修復出来ると思われます。
- 抜歯窩保存治療
- 30,000(1箇所)
- 使用材料
- Β-TCP(オスフィール)
PRF
保護膜(CytoPlast)
以下の様な、全身性疾患を抱えられている方、局所的に重度の問題を抱えられている方に対しては治療が困難になります。
しかし、一点でも問題が有れば、全ての処置が行えないわけでは有りません。
個別の状態に関しては事前にご相談いただき、それぞれの診査を行った上で処置を行わせていただきます。
全身性疾患として以下の様な疾患(重度の疾患)を抱えている方
- 重度のヘビースモーカーの方
- 高血圧
- 心疾患
- 糖尿病
- 骨粗鬆症
- 肝機能障害
- 腎機能障害
- 気管支喘息
- 血液疾患
- 自己免疫疾患
- アレルギー疾患
局所的疾患として以下の点に関して重度の問題が有る方
- 残存歯列と欠損部の状態
- 口腔粘膜と歯肉の状態
- 歯周病のリスクの高い状態
- 顎関節、咬合の状態
術後の顔貌に対して特別な要望を訴えられる方
再生治療事例
治療に伴う痛みが苦手な方のために笑気麻酔を導入しております。
笑気吸入により鎮静作用や鎮痛作用が見込め、リラックスして治療に望んでいただけます。